思い出

私が背負った十字架の重さ

私が背負った十字架の重さ

妖怪大戦争

私は映画が大好きで、子供のときは『妖怪大戦争』なる映画が大好きでした。
これは、私が高校に通っていた時の出来事
無事に2年生に進級する事ができ、新たな学年がスタートした私の背後に、ただならぬオーラをかもし出している奴が居ることに気が付いた。
よく見るとそいつは、妖怪大百科のボスみたいな「油すまし」の顔にそっくりな西くん。
映画の中の西くんは、蓑を着て関西弁を喋っていた。
ここは関西なので、関西弁は当たり前なのですがとてもリアルに見える。

驚いたのはそれだけではない。
ある雨の降っている日のこと・・・
西くんは傘を忘れたらしく、結構ずぶ濡れ状態で学校に登校してきたことがあった。
妖怪大戦争の映画では、「河童」という非常に有名な妖怪が出てくる。
ずぶ濡れになった西くんはなんと、その「河童」にも似ている。

私は密かに感動しまくったが、このことは当時、誰にも言えなかった。
昨日まで全く目立つことのなかった西くんは、今や私の中ではちょっとした有名人。
彼の歩く姿はまるで、映画のラストシーンの「百鬼夜行」を一人で再現しているように見える。

そして、私の視線を釘付けにする西くん。
いくら男とはいえ、妖怪「油すまし」や「河童」に似ていると言われたら、たいへんショックを受けることは容易に想定できる。

「これだけは言わないでおこう…」

普段なら率先して面白がる私ですが、「似ている」というレベルを軽く超越してしまった西くんのために、今回ばかりは一人で秘密を胸にしまっておくことを誓った。
私は貧乏学生だったので、本を買うことがなかなかできず、よく図書館に足を運んでいた。
そこで私が出会ってしまったのが『妖怪図鑑』
なんとそそるタイトルだろうか、私の心臓は激しく鼓動を打ちはじめた。
私はすぐに本を手に取ってページをめくってみた。
それはイラストや写真で日本妖怪を詳しく紹介している本で、絵がとってもこわかったけど、面白さもあるという不思議な図鑑。
もちろん西くん・・・いや「油すまし」が1ページを占めているページもちゃんとあった。
私は図書館の静かな空間でなんとか笑いをこらえていた。
しかし、肩の震えが尋常ではないほどガクガクになり、音を立てていないはずなのに注目を浴びてしまっていた。
しかも、手に持っているのは『妖怪図鑑』
小学生ならまだしも、初々しい青少年がこんな本で爆笑しそうになっているなんて言い訳のしようもない状況。
ひんしゅくを買いながらも、やっとの思いで、その本を借りることができた。
当時の私は、学費も生活費も自力だったので金の問題は深刻で、絶対に無駄遣いなど出来ない状態だった。
しかし、さすがに3カ月も連続で借りていたので、生活費を切り詰めて『妖怪図鑑』だけは購入した。
この妖怪図鑑は、暇さえあればずっと読んでいた大のお気に入り。
とくに「油すまし」のページは背表紙に折り目が付く状態にまでなっていた。
そんな西くんだが、おしゃれにはとても気を使う人。
私なんかは、髪の毛なんて、さほど気にならないけどが西くんは違う。
ちょっと出かけようとするときは、ドライヤーを当てまくる。
ひたすら当てまくるが、周りで見ている私からみても変化がわからない。

彼は微小な変化をこだわるおしゃれ人間。
永遠に終らないのではと心配になるくらい長い。
しかも、そんなけ手間を掛けているにも関わらず、さほど変化が見られない。

西くん「どう、おかしくない?」

この質問の答えは、要注意です。
この回答で

「うん、おかしい」

そんな風に言ったら、また永遠とドライヤでセットしだすのは目に見えている。
なんか答えないと納得しない西くん。

「うんっ大丈夫! いつもと一緒やから」

すると善ちゃんは横で・・・
「それって、いつもおかしいって言ってるのとおなじではないのか?」

そんな声は西くんには聞こえなかったようで、西くんは安心して家から出てきてくれた。
西くんは鉄道マニアでもあり、鉄道マニアっていうのはカメラも好きだったりするもの。
よく、電車と自分を写真にして私たちに見せてくれていたのですが・・・

写真には決まって、電車と西くんが写っている。
私たちには、どれも一緒の電車にしか見えず、何回、違いを聞いてもまったく覚えられなかった。
どこにでも走ってそうな電車とお地蔵・・・いや、西くんのツーショットばかり。
秋に淡路島にキャンプに行ったことがあり、夜になるとテントの中が結構寒かったことがあった。
みんな寝袋に入ってしゃべっている。
なにげに西くんを見ると、蓑によく似た上着を着ていた。

自爆テロ。

蓑は、「油すまし」の普段着

私の魂は激しく揺さぶられた。
そして心で叫んだ!
なにをしてるのか、西くん!
自ら地雷を踏むような危険な行為だよ、それは!?
おそらく、その姿を見て、そわそわしてたのは私一人だった。
でも、非常にドキドキしていた。
西くんのあまりの「油すまし」ぶりを見た私は、自分の所有している『妖怪図鑑』が、発禁本のように罪深いもののように思えてきた。
この写真が学校に出回ったら、西くんの人生は終わりになるかもしれない!
私は自分が背負ってしまった十字架の重さに倒れそうな気がしていた。


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