思い出

ひげそりの使い方を説明するつらさ

電気製品のことを聞かれる

電気工事士の善ちゃんは、お客さん宅に工事しに行くと、ついでのようによく電気製品のことを聞かれることも多いもの。

とある年配のお客さん宅に、工事に行った時もこんなことがあった。

お客さんから、電気カミソリについて質問された。

 

「兄ちゃん、電気カミソリ買ってんけど、どうやって使うか教えてくれへんかー」

 

彼は一瞬「教える方がむずかしいわ」と言いそうになるのをぐっとこらえた。

どうやって説明しようか悩んだ挙句、「今、実際に使ってみませんか?」と提案してみた。

 

「え、ええんか!工事前やのに悪いなぁ」

と言いながら、その言葉を待ってましたと言わんばかりに、すぐに電気カミソリを箱から取りだした。

お客さんはすぐにスイッチを”ON”にしたが、まったく動く気配はなかった。そう、充電が無かったようでした。

すごく気を落としてるお客さんに善ちゃんは・・・

「今すぐ使えますよ」

最近の電気カミソリは未充電でもコンセントに接続すればDC電源でフルパワーで動くようになっていることを教えてあげた。

コンセントと鏡がある洗面所まで移動し、電気カミソリのレクチャーは始まりました。

レクチャーと言っても、「スイッチを入れて、ヒゲのあるところにあてる」だけ

とても簡単で・・・

ってか

彼は、まだ何も発言してないのに、すでに使用していた!

その様子を黙って見ていた彼は一言

「そうそう、「ジョリジョリ」音が聞こえていたら剃れているってことだから、「ジョリジョリ」音が無くなったらそこにはもう髭はないってことやから、別の場所に移動すればいいですよ!」

この一言が、後々の悲劇につながることを彼は、この時点では知る由もなかった。

ひげを順調に剃っているのを横でじっと見ている姿もなんだかあほっぽいので、彼はお客さんをそこに残して、さっそくエアコンの設置工事に取り掛かった。

エアコン取付作業も終盤に入り、真空ポンプで真空引きしている時(真空引き中は少し時間の余裕がある)に、一息いれてたところ、なにかの異変に気が付いた・・・

「あれ?まだ電気カミソリの音が聞こてるやん」

「よっぽど、気に入ったんやろうなぁ」

と思ったが、それにしても長すぎるのは考えすぎだろうか・・・

少々気にはなったけど、まさか電気カミソリで怪我をする人もいないだろうし、電気カミソリは短い毛しか剃れないので、まさか髪の毛までツルツルにはしていないだろうと思い、様子を見に行くのを差し控えた。

今から思うと、その時に見に行っていたとしてもすでに遅かったと思う。

 

約20分の真空引き作業が終わり、その間に片付けも終わり、最終確認をお客さんと行うため、お客さんを呼びに行った。

彼の目の前に現れたお客さんを見て、彼は動揺を隠せなかった。

「え、なんで?」

「なんで・・・こめかみ辺りまでの髪の毛も無くなってるん」

つい、口が滑ってしまった。

”しかも、若干まゆげにまで被害が及んでいる!”

そう、正直者の彼は、真実をありのままオブラードに包むことなく伝える癖があります。

「えっ、なんかおかしい?」

いや、おかしいすぎる。

つっこみどころがありすぎて彼は絶句した。

「あっあ、あー、いや、えーっと、ちょっと・・いや、めっちゃ・・あの・・・」

 

「顎辺りでジョリジョリ音が無くなったから、いろんなところ探っとってん。」

彼は心で叫んだ

「探りすぎ! 程があるやん。絶対に手首の角度変わってたはずやん!」

彼は自分の説明方法に重大な欠陥があったのだと非常に後悔した。

「そうそう、ジョリジョリ音が聞こえていたら剃れているってことだから、ジョリジョリ音が無くなったらそこにはもうひげはないから、別の場所に移動すればいいですよ」

「そこはもうヒゲじゃないからー」

と心の中で叫び続けた。

せめてもの罪滅ぼしに彼は、テレビやビデオの設定をしてあげたら、お客さんは非常に大喜びだった。

 

 

昔の電気カミソリって、短い毛しかきれなかったけど、最新のカミソリは多少長くても剃れてしまうのかなぁ

次の現場に向かいながら思った。

正義感の強い善ちゃんは罪悪感で胸を締め付けられる思いだった。

 

 

 

 

 

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