方法、手法

ひ弱な「脱出用ハンマー」で車のガラスが割れる理由

ひ弱な「脱出用ハンマー」で車のガラスが割れる理由

脱出用ハンマー

水没した自動車に閉じ込められた場合、水圧でドアは開かなくなります。

こうなれば、車内から脱出する方法はガラスを割ることしかありません。

でも、車のガラスは映画で見るように素手で殴ったり、足で蹴ったりしたところで普通は割れません。

さらに、外から水圧がある状態であれば、ならなおさら割るのは困難になるでしょう。

しかし、『脱出用』と書かれて売られているハンマーを使えば、いとも簡単に割ることが出来てしまいます。

この脱出用ハンマーを見てみると、とてもひ弱に見えます。

重量も200g前後しかありません。

なぜ、こんなにもひ弱なハンマーで、あんなに強靭(きょうじん)なガラスを割ることが出来るのでしょうか!

 

変形のプロセスがない

例えば金属とかなら、変形してしまうので割ろうと考えても普通の力ではなかなか割れません。

ここで言う変形とは「弾性変形や塑性変形」のことをいい、とても大きなエネルギーを吸収する性質があるものです。

この性質を利用して、自動車のボディーなんかは、金属の材質を使って、事故の時に衝撃を吸収するように設計しています。

そのような金属とは違い、陶器やガラスは変形といったプロセスがありません。

このため、割ることを目的とするなら、ガラスはとても効率がいいと言えます。

脱出用ハンマーを見てみると、重量が軽くて、ガラスを割るには物足りなく思うかもしれませんが、実はハンマーの重量は、ほとんど影響しません。

声だけでガラスを割るのを見たことはないでしょうか、理屈はこれと同じで、ガラスに強力な応力波を作り出し、一部の範囲を速く動かす条件さえ作ることができれば、いとも簡単にガラスを割ることができます。

次の項目は、それを証明するための計算の概念です、興味のない人は「脱出用ハンマーの代用品」をクリックして読み飛ばしてください。

脱出用ハンマーの代用品の記事までスキップ

 

応力波の計算

脱出用ハンマーが発生させる衝撃力を、ロスなくガラスに伝えることが出来る条件として、衝撃力で得られる応力波を吸収しない硬い材質である必要があります。

手や足では、応力波を吸収してしまうため、割れにくかったんです。

衝撃力とは、ハンマーとガラスが激突した際の極短い時間に働く力のこと。

ハンマーの運動量と、ガラスが受けた力積が同等(以上)であれば、ガラスが割れる計算になります。

はじめに、ハンマーの運動量の計算式

運動量 = 質量 × 速度

次に力積ですが、これは力を時間で積分したものだから、この計算式

力積 = 力 × 時間

ハンマーの運動量力積と同等(以上)になれば、割れる条件になるため、次の式が成立します。

運動量 = 力積

上記の式から、衝撃力を求める式は、次のようになります。

衝撃力 = (質量 × 速度) ÷ 時間

これを見れば、脱出用ハンマーの質量が小さくても、速度で補うことでカバー出来ることがわかります。

さらに続けます。

ここまでで、お腹いっぱいになった人は、次こそ「脱出用ハンマーの代用品」をクリックして読み飛ばしても構いません。

脱出用ハンマーの代用品

 

衝撃力がガラスに応力波を作る

ハンマーで打たれた部分は縮んでしまいますが、復元する力が働くので伸びます。

それは、衝撃と言った瞬間的な力なので、すごく短い時間の出来事。

伸びることで隣接している部分が圧縮されはじめ、密度の高い部分と低い部分が交互に入れ替わります。

このように交互に入れ替わる現象を「」といい、この時に発生する波のことを「疎密波」といいます。

ガラスをモデルにすると、波が立体的に伝わるため、計算を単純にするため、一旦丸棒に置き換えて、疎密波が一方向にだけ進むと仮定します。

疎密波は、音が物質内を伝わる仕組みと、まったく同じものなんです。

衝撃力を受けた部分に疎密波が発生した場合、その動いた部分の質量は下記の計算式で導き出すことができます。

質量 = 密度 × 断面積 ×疎密波が伝わる速度 × 時間

密度:単位体積当たりの質量

断面積:形状の断面積、今回は丸棒の断面積

時間:衝撃を受けてから経過した時間

そして、さきほど導き出した、力積の関係『運動量 = 力積』から、時間で微分すれば次の式が出来上がります。

力 = 密度 × 断面積 ×疎密波が伝わる速度 ×物質が動く速度

次に、応力の概念を導入して、「応力波」を算出します。

応力とは、物質の内部で動こうとする力のことで、単位は「N/mm」

この単位から、単位面積当たりに掛かる力のことだとわかります。

先ほど求めた「」を「応力」に変換する式はこちら

応力 = 密度 × 疎密波が伝わる速度 ×物質が動く速度

このように、衝撃を受けた場所から「応力」が物質内部を移動することを「応力波」といいます。

丸棒を疎密波が移動する速さは、ヤング率密度で割ったものの平方根に等しいことは決まっているので次の式になります。

ヤング率 = 密度 × 疎密波が移動する速さ × 疎密波が移動する速さ

ヤング率とは、縦弾性係数とも呼ばれ、弾性範囲における応力とひずみの比例関係を表す比例係数のこと。

応力ヤング率を導入すると、密度を消すことが出来るので、最終的には次の式になります。

応力波 = ヤング率 × 物質が動く速度 ÷ 疎密波が伝わる速度

物質(ガラス)によって、疎密波が伝わる速度ヤング率はすでに確定しているため、変化を加えることができるのは、「物質が動く速度」だけ。

つまり、ハンマーがガラスに当たる時の速度だけと言えます。

このことから、脱出用ハンマーが軽くてもガラスの一部を移動させる速度は出せるため、脱出用ハンマーの重さは関係ないことがわかります。

 

脱出用ハンマーの代用品

前項での説明で、ハンマーの重量が関係ないことがわかったと思います。

それを踏まえて、裏技として、脱出用ハンマーの代用品を紹介します。

これは、車が水没したとき以外でも、事件に巻き込まれて車に閉じ込められた時でも覚えておくと役に立ちます。

そして、パニックになって、脱出用ハンマーが取り出せない時にも役に立ちますので覚えておいてください。

それは、シートベルトのこの部分

これでも車のガラスを割ることができます。

気をつけなければいけないのは、フロントガラスではなく、サイドガラスを割るようにしてください。

フロントガラスよりも、サイドガラスのようが強度が弱く出来ていますので。

 

最後まで読んでいただきまいてありがとうございます。

自由研究の題材としても面白い内容です。

 

 

 

 

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