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ボルトやナットを締付け過ぎたらダメな理由


締め付け管理

当社では、よくエアコンや給湯器の工事をするので、それらの工事を例に説明していきます。

エアコン工事で使用するフレアナットの締め付け

標準的なエアコンの取付け工事では、”ユニオン”を最低2個以上は使います。

室内機 ⇔ ユニオン ⇔ 配管 ⇔ ユニオン ⇔ 室外機


フロンガスが漏れないようにするため、密閉を確保するのに銅パイプにフレア部を作り、フレアナットで締め付け作業を行います。
この締め付ける力を、”軸力(締付け力)”と言い”適切な軸力を与える”ことがフレアナット締め付けの目的。

ボルト締結のメカニズムを説明

締めたボルトが簡単に緩まないのは、締め付けたことで伸びたボルトが元に戻ろうとする力が働くため。
ボルトを締め付けると、ボルト本体には引っ張り方向の力がかかり、引っ張られて伸びたボルトは、バネのように元に戻ろうとします。
そして、締め付けているもの(部品等)を圧縮するメカニズムになります。

ボルトが締まっている(固定されている)状態とは、引っ張られて伸びようとする力と、戻ろうとして締め付けるものを圧縮する力のバランスが取れている状態です。

ボルトの締めすぎによる問題

締めればいいってものではありません。
締め付けられていたボルトを緩めると、引っ張られて伸びていたボルトは元の形に戻ります。
でも、締め付ける力を増やしていくと、ある時点からボルトは完全に元の形には戻らなります。
この境界を「降伏点」といい、ボルトが完全に元に戻る範囲を「弾性域」(弾性変形範囲)、完全に元に戻らなくなる範囲を「塑性域」(塑性変形範囲)といいます。
さらにボルトを締め付けていくと、最終的にねじ切れることになります。
この点を「破断点」といいます。(下図参照)

ボルトが緩まないようにするには、なるべく大きな力で締め付けることが望ましいが、ボルトを塑性域まで締め付けてしまうと、破断点に近づくため逆に緩んだり、破損したりと、かえって危険な状態となります。
また、塑性域まで締め付けてしまったボルトは変形して元の形に戻らないため、再利用はできません。
だからボルトは、絶対に弾性域の範囲内で使用するのが理想といえる。

”軸力”が弱いと振動により緩む原因になり、強すぎると被締結部材の破壊を引き起こしてねじ部が塑性伸びを起こし緩みの原因になる。
なので、”適切な軸力を与える”ことが重要で、これがとても難しい。
このような事情から”軸力”を管理するのが望ましいことはわかっているけど、施工現場で”軸力”を測定することは困難。

代用特性として、容易に管理できる”トルク法”で管理を行うことが多いはこのため。
※製造工場でのエアコン機器の組立ても”トルク法”により組立てされています。
しかし、”トルク法”にも欠点があり、”軸力”のばらつき幅が大きく、ねじ部の効率が低くなります。
”トルク法”における”軸力”ばらつきの近似式

a=トルクばらつき b=摩擦係数のばらつき

この式から、締付けトルクのバラツキと摩擦係数のバラツキ”軸力”はバラツキに対する影響度がほぼ等しい。
aの低減は比較的簡単ですが、bの低減は非常に困難で、これが”トルク法”の最大の課題。
a=0.1 b=0.3 が標準的な数値(酒井智次「増補ねじ締結概論」参照)と考えると、締付け係数Q=2.27になる。
トルクの約90%が座面との摩擦に起因するため、座面の表面状態に大きく影響を受ける。
では、どうすればいいのか?

他の締付け管理法を考えてみます

弾性回転角法の締付け係数Q=1.5~3となり、”トルク法”と同程度。
塑性回転角法の締付け係数Q=1.2と低く、安定した”軸力管理”になります。
ただ、この方法では、塑性伸びを起こしているため、一度外すと再使用が出来ない欠点がある。

トルクこう配レンチ

トルクこう配レンチならこれはは解消されます。
トルクこう配法の締付け係数Q=1.2(JIS B 1083参照)と低く、ナットは再使用が可能の状態になります。


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