今回の記事は続編です。もっと初歩的なことを知りたい人は前回の記事からご覧ください。
前回の記事:いまさら聞けないエンジンオイルの選び方1
さらに選び方を知るためには、オイルの性能を知ることです。
オイルの性能が分かれば、きっと自分にとって必要なオイルを選ぶことが出来るでしょう。
安いオイルがダメと言うことでもないし、高いオイルが良いと言うことでもありません。
エンジンオイルの役割と機能
エンジンオイルには色んな役割がありますが、代表的な7つの役割を紹介します。
潤滑性
最も基本的な性能で、これがメイン性能となります。
エンジン内部は金属同士が擦れ合うため、絶対に潤滑性が必要になります。
冷却性
エンジンは熱くなるもので、水冷式エンジンとはいえ、エンジンの内部まで冷やすことは出来ません。
※昔は空冷もありました。
どうしてもエンジン内部からも冷却する必要があるため、エンジンオイルが冷却性の役割を果たしています。
さらに高負荷をかけるエンジンにはオイルクーラーなんてものがある場合もあります。
密閉性
シリンダーの中を上下しているピストンがあるのですが、クリアランス(隙間)がなければ上下には動きません。
エンジンの圧縮を確保するためにピストンリングという部品でクリアランスを最小にしているのですが、それでも圧縮は抜けてしまいます。
このクリアランスをピストンリングに油膜の力で埋めることで圧縮を確保しています。
密閉性は、オイルの粘度が高ければ高くなりますので、古くなったり、走行距離が増えてきたら少し上げた方が良いことが多いです。
10W – 30 ←こっちの数字を高く
清浄分散性
エンジンは燃焼機関なので、熱やブローバイガスなどと混ざることによってエンジンオイルは劣化します。
その時に、スラッジやカーボンという不要物まで発生しています。
その不要物がエンジン内部に再付着しないように防止する機能が清浄分散性。
オイルエレメント(オイルフィルター)は不要物をろ過する能力を持っているのですが、エレメントまでオイルで運べないとエレメントは機能しません。
オイルに含まれた不要物がエレメントに到達するまでに、いたるところに再付着しないようにしています。
ブローバイガスとは、シリンダー内からクランクケース内へ吹き抜けてしまった未燃焼ガスのこと
防錆性
エンジンは金属ですので、錆を抑制するため金属に付着しやすいように防錆性を持たせています。
応力分散性(緩衝性)
エンジンの上の方にある部品ですが、カムシャフトが回ることにより、ロッカーアームを上下に動かして、エキゾーストやインテークのバルブを上下に動かしています。
このクリアランスはゼロが望ましいけど、金属の摺動面があるため実際にゼロにはなりません。
応力分散性があると、このピンポイントでかかる力を分散させることができます。
古いエンジンに耳を澄ますと、カムがカタカタとなるのが聞こえます。
応力分散性は、粘度が高ければ高くなりますので、古くなってきたら少し上げた方が良いことが多いです。
オイルの粘度が上がると、エンジンは静かになります。
その代わり、粘度が高いゆえにエンジンには足かせにもなります。
10W – 30 ←こっちの数字を高く
酸化防止性
エンジンオイルの酸化を抑制する酸化防止性を持たせています。
ベースオイル(基油)
エンジンオイルの基になるオイル種類
ベースオイルだけでは、エンジンオイルの機能を出すことはできません。
エンジンオイルとは、ベースオイルに色んな添加剤を配合することで完成します。
100%化学合成オイル(フルシンセティックオイル)
エステル・PAO(ポリアルファオレフィン)などの化学的に精製された物
手間暇がかかるので高額。
鉱物油
石油などの天然由来の物
手を食わるところが少ないので安価。
部分合成油
鉱物油と化学合成オイルを混ぜた物
添加剤
ベースオイルに添加剤を加えないとエンジンオイルにはなりません。
およその比率
ベースオイル(8):添加剤(2)
摩擦調整剤
摩擦特性のを向上させる添加剤で、ベースオイルだけでは落とせないエンジン内部の汚れを削ぎ落す機能があります。
この配合が高ければ、エンジン内部を綺麗に保つことができる
清浄分散剤
この機能が高ければ、エンジン内部の不純物や劣化物をエンジンオイルに取り込んで、エンジン内部に再付着させないでオイルエレメントまで運ぶことができます
酸化防止剤
エンジンオイルが酸化するのを抑える添加剤。
粘度指数向上剤
上の表示でいうと「30」の部分
高温時の粘度指数を上げるための添加剤。
流動点降下剤
10W– 30
上の表示でいうと「10W」の部分
低温時の粘度指数を下げるための添加剤。
防錆剤
エンジンの金属部分にオイルを定着させる機能が高くなる添加剤。
金属面を空気に触れささないことで錆びないようにしています。
消泡剤
圧力のかかるエンジンオイルが泡立つと、圧力をかけた時に圧力が抜けてしまいます。
(ブレーキで言うべーパーロック現象と同じ)
エンジンオイルは、ポンプで色んな場所に運んでいるため、送り出す機構で泡立つようになっています。
この泡を発生させないようにする添加剤。
安いオイルと高いオイルの違い
添加剤は高価なので、添加剤の量が変わります。
もちろん、ベースオイルの違いがあって、化学合成オイルは人の手が加わっているため、高額となります。
ちなみに、安いオイルには下記の添加剤が少ない傾向があります。
摩擦調整剤
粘度指数向上剤
清浄分散剤
消泡剤
摩擦調整剤と清浄分散剤が少ないことによって、エンジン内部に汚れが残り蓄積します。
それによって、エンジンのあらゆる部分がコールタールのようにべったり付着して、こうなるとエンジンにとっては負荷しかなく熱もこもります。
そのコールタールのような物質は、徐々に硬化し、エンジンへのダメージが増えます。
これらは、長期間かけて進行するため、すぐには気が付かないです。
つまり、いくら頻繁にオイル交換をしたとしても、安いオイルではエンジンの寿命に差が出るは仕方がない事です。
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さいごに
エンジンオイルのキャップを開けて覗いてみて、内部がドロドロになっていたら要注意です。
そうなると、パワーがでなくなり燃費が悪くなったり、温度が高くなってエンジン周辺の補器類の劣化が促進したりします。
さらに、パッキンなどの劣化も促進させます。
結局、ここまで細かく性能を知ったところで、無難なエンジンオイルは純正指定オイルだったりします。
エンジンオイルは、純正指定オイルの価格と同等かそれ以上が望ましいと思います。
添加剤は高価なので入れば入れるほど高価になりますが、レーシングスペックの高額オイルは、クリーンにする能力よりも潤滑や耐熱に力を入れているため、普段使いの車にとっては良いオイルとは言えません。
考えるのが面倒な方は「純正指定オイル」を選択することをお勧めします。