酸素濃度の低い空気は危険
通常の空気の主な成分は、窒素が78.08%、酸素が20.95%、アルゴンが0.93%、二酸化炭素が0.03%となっています。
私たちは、この約20~21%の酸素濃度でないと生きていけません。
酸素濃度19.5%以下
酸素濃度が19.5%以下になると酸素欠乏状態になり、眠気や軽いめまいになり運動機能が低下します。
この時は、意外にも息苦しいと感じないもの。
また、酸素が欠乏しているかどうかは、臭いや色などでは全くわからないので、自分で気が付くことがありません。
稀に、車の中でもこの濃度になることがありますので、運転中に眠気が襲ってきたときは、空気を入れ替えてみてください。
酸素濃度16%以下
酸素濃度が、16%を下回ると、とても危険な状態になります。
人間は、肺胞でガス交換をしているのですが、肺胞毛細血管から肺胞腔(はいほうこう)に出てくるガスの酸素濃度が16%。
大気中の酸素濃度が21%であった場合、濃度勾配によって交換されます。
つまり、この勾配により私たちは、体内に酸素を取り込むことが出来ているのです。
一度でも16%以下の酸素濃度の空気を吸うと、この濃度勾配が逆転します。
こうなれば、呼吸すればするほど、体内の酸素は吐き出す一方になります。
酸素濃度10%の空気を吸えば、「10%の酸素が得られる」のではなく、「6%酸素を奪われる」ということ。
さらに人間は、血中酸素が不足すると呼吸反射の影響によりさらに呼吸しようとします。
だから、低酸素を一呼吸しただけで即死することがあるのです。
酸素濃度の低い場所
どのような場所で酸素濃度が低い可能性があって危険なのか?
例えば、二酸化炭素は空気よりも重いため下に溜まります。
ですので、地下室や窪地などの周囲よりも低い場所は注意が必要。
昔、人力で井戸を掘っているときに、この災害が多かったといわれています。
よく、映画などで見るのですが、マンホールの中は非常に酸素濃度が低いです。
微生物が酸素を消費しているし、低酸素空気のほかに硫化水素も多く発生しています。
絶対に、興味本位で入ることは止めるべきなんです。
また、倉庫や貯蔵庫も要注意。
野菜や木材の場合、光合成により、酸素を消費しています。
「は?」
と思われましたか?
暗室の場合は、光合成により酸素生成するよりも、酸素消費のほうが上回るのです。
お酒や調味料の原料は、発酵することにより、酸素を消費していることがあります。
金属などのスクラップがある場合は、錆びることによって、大量に酸素を消費している状態があります。
錆びるとは酸化することですので、錆が多いのは酸素を消費している証拠。
お子さんなどが、このような場所で遊ぶことがないように、十分に注意してあげてください。
「そんな大げさなぁ」と思うかもしれませんが、あまり知られていないところで結構死亡事故が発生しています。
事故例1
これは、度々ニュースでも報道されているので有名な話ですが、パーティーで「変声」するために、純度の高いヘリウムガスを吸って死亡している事故があります。
通常は、「変声」用に売られているヘリウムガスは、酸素が20%入っているので、安全なのですが、知識のない者が、風船に使用する純度の高いヘリウムガスを吸い死亡する事故が発生しています。
この場合、酸素濃度が限りなくゼロに近い空気を吸っているので、大変危険な行為です。
事故例2
以前、私が出入りしていた工場で実際に合った事故。
ある作業員が、工場内を歩いて移動中に、手に持っていたガキを落としてしまいました。
運悪く、微妙に深い溝に入ってしまったようです。
(深さをはっきりと覚えていないのですが、そんなに深い溝ではありませんでした。)
見たところ、溝の蓋もすぐに外れそうで、ちょっと頑張れば届きそうな位置です。
(私も現場を見ましたが、本当にそう思いました。)
大切なカギですので、特に意識せずに拾おうとしたのだと推測します。
溝の蓋を外し手を伸ばすも、あと少し届かなかったようです。
さらに奥まで手を入れるために乗り出した結果、頭も溝の中に入っていました。
そこで、その作業員は、カギをとりながら呼吸したのだと推測します。
おそらく一呼吸のみ。
作業員は、そのまま即死となり、発見されたときも、同じ状態だったようです。
後ほど、溝の中の酸素濃度を測定すると8.5%でした。
事例3
扉を開放したままの、海上コンテナの中で作業していた作業員が作業中に意識がなくなり、そのまま死亡する事故もあります。
扉を開放していても、無風により、全く空気が置換されないこともあります。
また、コンテナ内部が錆びており、錆びによりさらに酸素が奪われていたと推測されます。
この時の、酸素濃度は15%でした。
おそらく、意識不明で倒れてしまい、周囲の人に気づかれるのが遅かったことが原因とみられています。
まとめ
いかがでしたでしょうか、あえて「サイレントキラー」と呼んでいますが、見た目にもわかりにくく色も臭いもないため、すぐには気が付きません。
「フラッ」となったときは、時すでに遅しで動くことができず、そのまま死ぬことが多いです。
その状況を発見した人も、助けようとして同じ被害にあうことが多い事故。
みなさんも、身近にある「サイレントキラー」に気を付けてください。