キン肉マン
私が高校生のころ、入学したころはヒョロヒョロだった生徒の一人が2年生になったころにはムキムキのキン肉マンに変貌した生徒がいました。
西くんは、その姿にすごく憧れてしまい、すぐにウェイトリフティングを開始しました。
幸い私たちの学校にはトレーニングの設備が揃っていましたので、お金をかけずにすぐにスタートすることができました。
そして、西くんのトレーニングを面白がって見ていた私と善ちゃん。
いつの頃からか、見学ついでにトレーニングしていた私と善ちゃんは西くんよりもムキムキになっていました。
西:「なんで一生懸命にトレーニングしている俺よりも、お前らのほうがムキムキになるねん。」
私がトレーニングしたままの設定で、西くんや善ちゃんが使おうとすると全然動かなかったことを覚えています。
現在はデスクワーク中心の仕事になっているので、善ちゃんの方がものすごく体格がガッチリしています。
当時の善ちゃんは非力でしたが、西くんよりはムキムキになっていました。
西くんは私のことはあまり気にしなかったのですが、善ちゃんに対してはものすごくライバル意識が強かったので、そこからプロテインを飲むようになりました。
そして、食事にも力を入れて本格的にトレーニングを始めたのです。
トレーニングを始めたのが春ですが、夏になったころは3人ともキン肉マンになっていました。
そしたら西くんから驚くべき提案が・・・!
プール
西くんがプールに行きたいと言い出しました。
私はプールって言うから、鍛えた体を見せるために派手なところに行くものとばかり思っていましたが違いました。
さすが西くんです、近所にあるスポーツジムのプールを選択しました。
その名は「しあわせの村」
まぁ私はどこでもよかったのですが、なぜか善ちゃんの顔色が悪いです。
瀧 :「善ちゃん、どうかした?」
善:「俺“トンカチ”やから」
西:「それは“かなづち”って言うんとちゃうか?」
善ちゃんにツッコミを入れるときの西くんは最高の笑顔を見せます。
善:「俺はてっきりプールに浸かるだけで、マジの水泳とは思ってなかったぞー」
西:「まぁ落ち着けや」
善:「おまえのそれは、いつ聞いても本間にムカつくわ!」
私は水泳が得意だったので、出来るだけ泳がないことにしてました。
私の泳ぎを見て、この2人が泳ぎにくくなったらかわいそうなので。
西:「俺が見とったるから、おまえ(善ちゃん)一回泳いでみろや」
そう言いながら西くんは足の着くプールへ移動しました。
私と西くんが見守る中、善ちゃんの泳ぎが始まりました。
善:「じゃぁ・・・ちょっと泳いでみるわ」
泳げないといいながら、飛び込みからのスタートです。
バッ シャーン!
泳げないくせに飛び込むって…、しかも雑い。
バシャ……バシャ バシャ バシャ…
西:「なんやー、泳げてるやないか!」
瀧 :「いや、リズムが悪すぎ、絶対とまると思なぁ。」
バシャ…バシャ…バシャ…
善ちゃんが、15メートルぐらいのところで、溺れだしました。
ブハァー…
ハァ、ハァ…
.。o○ ブク
アカン…
ハァ…
.。o○ ブク ブク ブク
○o。.……ブハァー
そして、足がつくことに気が付き、立ちました。
善:「あっかん、俺息継ぎがでけへんわ」
善ちゃんは、顔が青くなった状態で、こちらに歩いて戻ってきます。
善:「俺、とにかく息継ぎがでけへんねん」
善ちゃんが泳いだ距離は15メートルです。25メートルプールですが最後まで泳ぐことができませんでした。
気が付くと西くんが、嬉しそうにケラケラと笑っています。
西:「まぁ落ち着けやぁ!練習すれば俺のように泳げるようになるから心配するな」
善:「そう言うおまえは、どんなけ泳げるねん!」
西:「では、お手本をみせまーっす。」
西くんは、得意げに言いました。
私たちの高校にはプールがなかったので水泳の授業はありませんでした。
誰がどのくらい泳げるのか全く未知数。
西くんも同じように飛び込み台に立ちます。
バッ シャーン!
…うん、善ちゃんと変わらないぐらい雑な飛び込みです。
バシャ……バシャ バシャ バシャ…
善:「おぉー、あいつ、あんなに泳げるのか!」
瀧 :「いや・・・なんか・・・おかしいようなぁ・・・」
バシャ…バシャ…バシャ…
善ちゃんが溺れだした魔の15メートルにさしかかりました。
まだ進んでいます。
バシャ…バシャ…バシャ…
20メートルにさしかかったころです。
ブハァー…
ハァ、ハァ…
.。o○ ブク
アカン…
ハァ…
.。o○ ブク ブク ブク
○o。.……ブハァー
私には、西くんの動きが善ちゃんと全く同じ動きにしか見えませんでした。
そう、なんと西くんもあまり泳げなかったわけです。
そして、25メートルプールを泳ぎ切れなかった西くんがこちらに戻ってきます。
唖然と口を開けて、西くんを見つめる善ちゃんを見た瞬間、私は吹き出しそうになりました。
しかし、私はグッと笑いをこらえた。
西くんは、自信に満ち溢れた顔でこちらに戻ってきます。
そして、善ちゃんに言います。
西:「ほらなぁ、お前も練習したら、これくらい泳げるようになるからな! はーっはっはっはっー」
これ、西くんの冗談ではなくマジで言っています。
善ちゃんはそっと、こぶしを握り言います。
善:「そっそうやな、すっすごく…参考になるわ」
西:「ほたら、今から俺が教えるからプールに入ろうぜ!」
善ちゃんは、私を見て、目で訴えています。
善の心:「今すぐ西くんをどうにかしろよ」
瀧 :「じゃー2人で一緒に溺れておいで。」
西:「溺れるのは善ちゃんだけやでー」
ポジティブ
自信を持つことは非常にいいことです。
善ちゃんは呆れていましたが、私は西くんの前向きな気持ちが非常に眩しかった。
その西くんのポジティブシンキングには意外と何度も救われた記憶があります。
西くんぐらいのレベルになるには常人には難しいですが、実際に彼を見ているとなぜか幸せそうに見える。
私は設計開発の仕事を生業としているのですが、かなり精神的に追い詰められることもあります。
こんな時、西くんのポジティブシンキングをいつも思い出し、そして「まぁ、落ち着けや」の魔法の言葉を自分の心に言い聞かせています。
さいごに
自信には、実は根拠がありません。
そうなんですよ、自信は持ったもん勝ちだったんですよ。
自信のない時ほど、自信を持って開き直ってみてください。