配属部署決定
希望に満ち溢れた状況で就職を果たし、長い入社研修が終わった後に待ち受けているのが配属部署の発表。
当たり前ですが、全員が希望部署に配属されることはありません。不本意にも希望していない部署へ配属される社員もたくさんいるわけです。
本来なら、入社させていただけただけでもありがたいはずなのです。人間の欲望というのは、その欲望が満たされれば次の欲望が生まれる生き物です。
入社させて頂いた感謝の気持ちを忘れて、希望部署に配属されなかったことで「やる気が起きない!」なんて考えている方もいるのではないでしょうか。
実は私もその一人でした。
私はレストランのアルバイト経験からホテルに就職しました。
私が希望していた業務はドアマンかベルボーイでした。
私は人の顔と名前を覚えるのが得意だったので、2回目以降は名前で呼んでお出迎えをしたかったから。
レストランでのアルバイトの時も、2回目来たお客さんの顔は覚えていて、前に来たときはどこの席に座って、誰と何を注文したか まではっきりと覚えていました。
いつも違う女性を連れてくる男性は、店員にはバレていると思った方がいいです。
参考記事:レストランのアルバイト経験から私が学んだもの
入社研修の最後の日、順次配属者が読み上げられていきました。
次々に読み上げられているのですが、一向に私の名前は出ることがなく、ついに一番最後になりました。
これ以上、思い当たる部署がありませんでしたので「あれ?きっとどっかで呼び忘れたのかなぁ」なんて考えていた時に、私の名前が突然読み上げられました。
所属部署…「総務部!」
「はい?」
総務部といえば、ユニフォームではなくスーツです。
「えっ、今まで受けてきた対お客さん用の研修はいったいなんだったのか?」
知識のない私には、お客さんとの接点が思いつきません。
いやいや、裏方感がありすぎます、別に総務部をバカにしているのではなく、想像もしていなかった配属先に、ただただ驚いてしまいました。
しかも、総務部は私一人です。
私が商業科出身者なら理解できますが、私は普通科でもなく工業科卒業です。
なんとも言えない、孤独感に襲われると同時に、業務内容が全く想像できない非常事態に襲われました。
総務部での日々
同じフロアに居るのは、偉い役職の人たちばかり。
同期達は「研修でお世話になった人達なんて、研修の時以来逢ったこともない」なんて言っていますが、私は研修時に合った人しか出会っていませんでした。
完全に自分だけアウェイです。
仕事と言えば、パソコン入力やファイル整理作業だけ。
人の個人情報を目の当たりにしながら、「こんな書類、俺が見てもいいのかぁ?」と思うような書類ばかりでした。
邪魔にならないように、身を潜めているだけの退屈な日々。
そして、2か月経過した頃、私は意を決して次長に言いました。
瀧 :「大変申し訳ないのですが退職させて頂いてもよろしいでしょうか。」
次長:「えっ、ちょっと待ちーなぁ。まず話を聞こっかぁ」
次長は、そういうと、私についてくるように言いました。
次長が向かった先は、社員食堂です。
普通は誰も利用していない時間帯だったので、人の気配が全くありませんでした。
次長:「そんななぁ、入社してすぐに辞めるやなんて、なんか嫌な事でもあったんか?」
そう、特にいじめられていたわけでもなく、こき使われていたわけでもなく、普通に考えれば何も不満はなさそうな様子でしたから、私自身も改めて聞かれると、うまく自分の気持ちを伝えることができませんでした。
瀧 :「私は総務の仕事だったら、ホテルに就職していません!せめてお客さんと接点がないと納得が出来ないです。」
次長:「あっそうなん?…君は夜間を卒業しているから、もっとガッツがあると思っていたんやけどなぁ… じゃぁ食堂部で働くのはどうや?食堂ならずっとお客さんと接点が持てるで」
私は社員食堂で話をしながら「食堂で働くのはどうか?」と聞かれ「えっ、ここで?」と思わず口に出してしまいました。
次長:「君は相変わらず面白いなぁー ワァーハッハー」
次長が高々と笑い出しました。
「おちょくっているのかぁ」と思いながら真顔で次長を見ていると、こんなことを話ししはじめました。
次長:「まぁ今の君やったらな、会社の戦力にはならないんやから、職種の希望なんて言ったらあかんのよ。」
「グサッ」(-“-)
次長:「気に入った仕事だけやるなんか、20年早いから。…そうやなぁ、それやったら食堂部で頑張りーな… いやな、実は初めからそのつもりやたんや。君が食堂部でやれるかどうか、ちょっとだけ直接見ておきたかったんや、だから初めに総務部にしたんやで。」
瀧 :「でも、食堂は正直、恥ずかしいです!だって同僚だって毎日来るのに、どうすればいいんですか!」
次長:「君の同僚みたいな金のない人が、最上階のレストランには、なかなか来ないで。」
瀧 :「へっ?」
次長:「君はさっきから、食堂って言ってるけどなぁ、レストランは食堂部の花形やで。しかもソムリエに育てるなんて、会社にとって物凄い投資になるわけやし。」
食堂部は、同僚の誰も配属されていませんでした。
ホテルのレストランで働くこともまた、想像していなく非常に驚きました。
驚いている私に、さらに追い打ちをかけるように衝撃の言葉が続きました。
次長:「それにな、このホテルのアシスタントマネージャーは、君がレストランで働いている姿をよく知ってるそうやで。」
後日続きを投稿しますが、企業は自分たちが想像しているよりも先を見据えています。
2ヶ月でギブアップした私が言うと、まったく説得力がありませんが、いくら希望の配属先ではなかったとしても、3年間ぐらいは黙って働いてみることをお勧めします。