日本の板金加工技術は世界に誇れる技術力があります。
板金加工は、低コストであるため、利用されることが多い分野。
折り紙みたいなものですから、加工前の材料は板ですから保管しやすいこともメリットです。
機械設計者として、この板金設計をマスターしておくことは必須。
私のノートから、抜粋して記事にしていますので参考にしていただければ幸いです。
板金設計はボリュームが多いため、シリーズ化して記事を投稿します。
内曲げR
内曲げRは、どれくらいにするべきなのか。
基本の推奨値: 内曲げR = 板の厚み(t)
しかし、材質によって大きく数字が変わりますので詳しくは基本の推奨値ではなく下記をご覧ください。
材質 : 最小内曲げR
SPCC/SGCC/SECC(鉄板) : 0.5t
A5052P(アルミ板) : 0.5t
SUS304-CP(ステンレス板) : 1t
SUS304-CSP(バネ用ステンレス板) : 3~4t
現実的にはステンレスなどの硬い材質以外は、これ以下でも問題ありません。
むしろ実際はほぼゼロであることが多い。
設計値としては鉄板やアルミ板だと、板厚の半分を最小内曲げRと設定して問題はありません。
ポイントは断面急変部を回避することにあります。
但し、下記形状の場合は、R ≧ t としてください。
但し、下記形状の場合は、L ≦6 t としてください。
コーナーヌスミ
折り曲げ加工は、振動や衝撃によって、ヒビ割れがコーナー部に生じることがあります。
これを防止するために、ヌスミと言われるスペースを確保します。
このヌスミを確保することにより、材質にストレスを与えず安全に加工することが出来ます。
但し、防滴を考慮したり、シールド(EMC)を考慮したりする場合はヌスミ寸法を極力減らしムリ曲げも可能とする設計で問題ありません。
ヌスミ = A
通常はこれに従うことです。
ヌスミ = t
極力避けたいですが、性能上必要な場合に使用する。
ムリ曲げ
通常でしたら文句を言われるやり方ですが、必要な場合は利用します。
板厚(t) : ヌスミ(A)
0.5~0.8mm : 1mm
1.0~1.2mm : 1.5mm
1.5~1.6mm : 2mm
2.0~2.5mm : 3mm
3.0~3.2mm : 4mm
3.5~4.0mm : 5mm
最小曲げ高さ
板を曲げる汎用金型の都合により、最小曲げ高さを意識しておく必要があります。
曲げ高さ寸法Hは、板厚(t)と内曲げ(r)により下記の式で求めることが出来ます。
H = 3.5t + r 以上
但し、これは汎用金型が前提ですので、専用金型を別途作成する場合はこの限りではありません。
曲げ寸法許容値
汎用金型の形状の都合で、複数曲げの場合には、加工できる形状に限界があります。
許容できる寸法を記載します。
B ≦ 2A
C ≧ 6
A ≧ 2B
B ≧ 2C
D ≧ 6
但し、これは汎用金型が前提ですので専用金型を別途作成する場合は、この限りではありません。
曲げと穴との距離
穴に近い位置で板を曲げると穴が変形することがあります。
そこで、曲げと穴との距離を下記以上とします。
L = 3.5t + r
L = 2.5t + r
但し上記L寸法が確保できない場合、下表のようにヌスミAを設けるといいです。
( L ー A ) ≧ t
B ≧ C
D ≧ 2t
t:A
0.5~0.8mm: 1mm
1.0~1.2mm: 1.5mm
1.5~1.6mm: 2mm
2.0~2.5mm: 3mm
3.0~3.2mm: 4mm
3.5~4.0mm: 5mm
但し曲げ加工後に穴加工する場合は、この距離を無視できます。
その場合、加工コストが跳ね上がることを想定する必要があります。